レベルデザイン時の確率表示とUX

少し内容が散漫としていますが思ったことを書いていきたいと思います。

この記事ではゲーム内で表記される確率とユーザーの体験(いわゆるUX)を考えてみたいと思います。さて、よくガチャで当たりの確率が1%だと100回引いた時点での当選確率が63%程度とされています。これは以下の式で表すことができます。

確率 = 1.0 - ((1.0 - 確率(%)) ^ 試行回数)

具体的数値を入れると以下のようになります。

63% ≒ 1.0 - ((1.0 - 0.01) ^ 100)

この確率ごとの和が1になるまで(25%なら4回、10%なら10回という風に)当選を試行したときの確率を表にした場合が以下表になります。

確率 回数 確率
1% 100 63.4%
2% 50 63.6%
4% 25 64.0%
5% 20 64.2%
10% 10 65.1%
20% 5 67.2%
25% 4 68.4%
50% 2 75.0%
100% 1 100.0%

この確率計算はこのサイトが非常に詳しいですが、同じ話をしても仕方がないのでここではこの確率表示とユーザーの体験と絡めて記事を書いていこうと思います。確率でゲーム内のリソースの当選を制御する場合、この計算結果をゲームにそのまま適用するとユーザーが何を体験するでしょうか?という話です。結果的にユーザーは確率を試行回数で足して合計が100%まで達した時点での当選確率は100%にりません。しかも当選するまでかなりの回数を試行することになります。

次に確率をもう少し掘り下げていきます。

99.9% までに必要な回数

冒頭の計算式からほぼ大半のプレイヤーが当選しているであろう「99.9%が当選状態」になる確率までの試行回数を表にすると以下のようになります(これでもまれに当選しない人が居ますがこの話からは除外します。

確率 回数 確率
1% 688 99.901%
2% 342 99.900%
4% 170 99.903%
5% 135 99.902%
10% 66 99.904%
20% 31 99.901%
30% 20 99.920%
40% 14 99.922%
50% 10 99.902%
60% 8 99.934%
70% 6 99.927%
80% 5 99.968%
90% 4 99.990%
100% 1 100.000%

表から分かると思いますが50%でも99.9%になるまでに10回の試行が必要です

従って確率から当選を期待する回数と実際に当確するまでの回数にかなりの差があることが分かります。

ゲームデザインの確率について

従って、ゲームデザインなどでアイテムドロップが2回に1回発生するようにしようと50%を設定したとします。そうすると10回試行してやっとドロップするユーザーが出てきます。この事は確率表記から「ユーザー期待する回数」からかなり乖離した体験をするユーザーが出ることを表します。

なので、100人中99人は3回程度で拾えたとしても1人が10回やってやっとドロップしたとしても「ドロップが渋い」→「クソゲー」などとレビューに書き込まれる可能性が出てきます。これがもとでアプリのレビューに★1つが付いたらそれを覆すのはアプリの正常な仕様の結果により、事実無根のクレームではないため削除要請もできず覆すことが非常に難しいです。レビューに「ドロップを絞って内容を水増ししてるクソゲー」lなどとレビューが付いた場合、開発側にとっては得なことは一切ありません。

また、この傾向は低い確率に行くほどさらに顕著にります。表からは90%以下から既に表記と体感がほとんど一致していません。

  • 85%表記なのに4回かかった、期待値は1~2回程度
  • 70%表記なのに6回かかった、期待値は1~2回程度
  • 50%表記なのに10回かかった、期待値は1~3回程度
  • 20%表記なのに31回かかった、期待値は2~6回程度

このようなことが通常で発生します。

更に低い確率で15%と表記している場合はもっと悪く、実際は40回以上プレイしないと出ないユーザーが出ます(100人単位でプレイしていると普通に出ます)こうなるとこのプレイヤーの体験としてはもう最悪です。10回程度試行した時点でプレイヤーが良い印象を抱かないのは確実で(当選したものに価値があればある程度緩和されますが)通常ドロップ程度でこのような確率を踏んだ場合、プレイヤーは当選した嬉しさより当選しないことのイライラが確実に上回ると思います。

実際の当落の確率はさておきプレイヤーの期待値はゲームを進行するうえで非常に重要です。前述の表の通り50%なら2回、25%なら4回これに加えてプラスマイナス1~2が期待値程度です。実際プレイヤー間の公平性を保ちつつ期待値以内で当選させるために確率ですべての当選を扱う場合は50%表記では97%程度を設定しないといけません。この期待値を裏切られるとユーザーはドロップを渋っていると結論してしまいます。

繰り返す事を好ましく思うユーザーがいる事は確かなので時間がかかる以外特にデメリット無くサクサク繰り返せるなら良いですが、繰り返すとデメリットがある(=全体的な難易度が上昇する、周回に時間がかかりすぎる、ゲームが進行してしまう)等がある場合、アプリへの心証が良くなることはほぼ無いと思います。

このため「そもそもそのような低確率を設定しない」、や、「試行回数によるドロップの最低保証を行う」などの救済措置を実装するなどして確率に全てを任せて数値からの印象以上にドロップ率が悪いという印象を持たないように調整する必要があります。それはもう確率ではないですが…

個人的な印象ですが日本のゲームは確率を絞って調整するほうが多いです。海外のゲームは確率を広げて選択枝の多さで調整するという傾向が、現在でもそこそこ残っている印象ですがドロップせず周回を重ねる必要がある(=ユーザーに強いストレスを与える)という設定は2020年のスマホゲームではやってはいけないゲームのレベルデザインの一つだと思います。

と、とあるゲームをプレイしていて思いました。

【おまけ」1%~100%までの99.9%になる確率

確率が99.9%以上になるまでの試行回数を1%~100%まで1%刻みで載せておきます。

確率 回数 確率
1% 688 99.901%
2% 342 99.900%
3% 227 99.901%
4% 170 99.903%
5% 135 99.902%
6% 112 99.902%
7% 96 99.906%
8% 83 99.901%
9% 74 99.907%
10% 66 99.904%
11% 60 99.908%
12% 55 99.912%
13% 50 99.905%
14% 46 99.903%
15% 43 99.908%
16% 40 99.906%
17% 38 99.916%
18% 35 99.904%
19% 33 99.904%
20% 31 99.901%
21% 30 99.915%
22% 28 99.905%
23% 27 99.914%
24% 26 99.920%
25% 25 99.925%
26% 23 99.902%
27% 22 99.902%
28% 22 99.927%
29% 21 99.925%
30% 20 99.920%
31% 19 99.913%
32% 18 99.903%
33% 18 99.926%
34% 17 99.914%
35% 17 99.934%
36% 16 99.921%
37% 15 99.902%
38% 15 99.923%
39% 14 99.901%
40% 14 99.922%
41% 14 99.938%
42% 13 99.916%
43% 13 99.933%
44% 12 99.905%
45% 12 99.923%
46% 12 99.939%
47% 11 99.907%
48% 11 99.925%
49% 11 99.939%
50% 10 99.902%
51% 10 99.920%
52% 10 99.935%
53% 10 99.947%
54% 9 99.908%
55% 9 99.924%
56% 9 99.938%
57% 9 99.950%
58% 8 99.903%
59% 8 99.920%
60% 8 99.934%
61% 8 99.946%
62% 8 99.957%
63% 7 99.905%
64% 7 99.922%
65% 7 99.936%
66% 7 99.947%
67% 7 99.957%
68% 7 99.966%
69% 6 99.911%
70% 6 99.927%
71% 6 99.941%
72% 6 99.952%
73% 6 99.961%
74% 6 99.969%
75% 5 99.902%
76% 5 99.920%
77% 5 99.936%
78% 5 99.948%
79% 5 99.959%
80% 5 99.968%
81% 5 99.975%
82% 5 99.981%
83% 4 99.916%
84% 4 99.934%
85% 4 99.949%
86% 4 99.962%
87% 4 99.971%
88% 4 99.979%
89% 4 99.985%
90% 4 99.990%
91% 3 99.927%
92% 3 99.949%
93% 3 99.966%
94% 3 99.978%
95% 3 99.987%
96% 3 99.994%
97% 2 99.910%
98% 2 99.960%
99% 2 99.990%
100% 1 100.000%